“内定辞退”を減らすために企業ができること
“内定辞退”を減らすために企業ができること
「内定を出したのに、入社してもらえなかった」「最終面接でいい感触だったのに、連絡が取れない」──。
採用活動で最もショックな瞬間のひとつが、内定辞退です。
実は近年、内定辞退率は年々上昇傾向にあります。
リクルートの調査(2024年度)によると、新卒採用では約70%、中途採用でも30%以上の企業が「内定辞退の増加」を実感しているとのこと。
ただし、この問題の多くは“候補者の気持ちの変化”を企業が適切にフォローできていないことに原因があります。
今回は、内定辞退を減らすために企業が実践すべき具体的なアプローチを3つのステップで紹介します。
1. 「内定後=採用完了」ではないという認識を持つ
まず最初に意識を変えなければならないのは、採用プロセスのゴール設定です。
多くの企業が「内定通知」を出した段階で“採用完了”と捉えてしまいますが、実際にはここがスタートラインです。
候補者にとって内定とは「選択肢のひとつ」。
他社との比較検討、家族との相談、転職活動の継続など、決断のための期間が続いています。
この“揺れ動く期間”をどうフォローするかが、内定辞退率を大きく左右します。
まず企業側ができるのは、内定後すぐに「フォロー計画」を立てること。
採用担当者が定期的にコンタクトを取り、関係を継続的に築くことが大切です。
- 内定通知から3日以内にフォローメールを送る
- 1週間以内にカジュアルな面談やオンライン面談を設定する
- 入社までのロードマップ(研修や配属の流れなど)を明示する
これらを体系化するだけで、候補者の“安心感”が格段に高まります。
2. “企業理解”を深めるタッチポイントを増やす
辞退の理由の多くは、「他社の方がイメージしやすかった」「実際の働く姿が見えなかった」など、
候補者の“企業理解不足”による不安です。
この課題を解決するために有効なのが、“内定者体験”をデザインすること。
具体的には以下のような取り組みが効果的です。
- 現場社員との座談会を開催する(オンラインでも可)
- 内定者向けニュースレターで社内情報を共有する
- 配属先の上司・メンターが動画メッセージを送る
特に、社員インタビューや「1日の仕事の流れ」を映像化する施策は高い効果を持ちます。
候補者が“働くイメージ”をリアルに持てるほど、辞退率は下がります。
また、入社前の“心理的距離”を縮めるために、SlackやLINE OpenChatなどのツールで内定者コミュニティを運営するのもおすすめです。
「すでに仲間がいる」と感じることで、不安よりも期待が上回るようになります。
3. “企業からの想い”を伝える採用CX(候補者体験)を設計する
候補者は、内定をもらうまでの対応をすべて覚えています。
返信のスピード、面接官の雰囲気、メール文の丁寧さ──。
これらの一つひとつが「この会社で働きたいかどうか」を判断する材料になります。
採用活動を「候補者体験(CX)」としてデザインすることで、
企業の印象を“内定通知後”もポジティブに維持できます。
たとえば──
- 内定通知メールをテンプレートではなく、担当者の言葉で送る
- 面接終了後に、候補者へ“フィードバック”を返す
- 採用広報コンテンツ(社員紹介、理念ムービーなど)を内定者専用ページで公開する
候補者に「自分は大切に扱われている」と感じてもらえる体験設計を意識するだけで、辞退率は自然と下がります。
4. “入社前ギャップ”をなくすための情報開示
辞退の背景には、「入社してから想像と違ったらどうしよう」という不安も大きく影響しています。
そのため、ポジティブな面だけでなく“リアルな部分”を伝えることも重要です。
たとえば、
「繁忙期は残業が多いが、チームで支え合う文化がある」
「スピード感が求められる分、意思決定が早く裁量が大きい」
など、誠実に伝える姿勢は信頼につながります。
「悪い情報は隠す」よりも「一緒に乗り越える姿勢を見せる」。
これこそが、内定承諾率を高める最大の鍵です。
5. “内定者フォロー”の主導権を現場にもたせる
人事担当者だけでなく、現場リーダーや配属予定の上司もフォローに関わることで、
候補者との接点が“よりリアル”になります。
現場の声は、どんな説明よりも説得力があります。
「あなたと一緒に働けるのを楽しみにしている」といった一言が、
候補者の最終判断を大きく動かすことも少なくありません。
フォロー体制をチーム全体で共有し、
「入社までの3か月間をどう支えるか」を社内の共通目標に据えることが重要です。
まとめ
内定辞退を減らすポイントは、「内定=ゴール」ではなく「入社=スタートライン」という意識転換です。
候補者の不安を先回りしてケアし、入社後の期待を丁寧に育てること。
この小さな積み重ねが、企業の信頼を生み、結果として採用の質を高めます。
採用活動の最後の1か月こそが、企業文化の真価が問われる時間。
“内定者を大切にする企業”は、必ず次の採用でも選ばれます。


